2022/06/19 学習法
ESL方式の何が問題なのか?
7~10歳のお子さんにこの実験をしてみてください。
まず、A4用紙を何枚か用意します。
表面には’私’、’謝る’、’好きだ’、’母’、’タクシー’、’乗る’、’先生’、’ボール’、’投げる’、’子どもの名前’、’宿題’、’終える’などを書いて裏面には英語の意味を書きます。
そして質問してみてください。
英語をある程度学習した子供なら大部分の単語が言えます。英語学習を始めたばかりの子なら分からない単語があるので、事前に暗記させます。
その後、英語で下の文章を作るように質問してみてください。
質問1: 「私はりんごがすきだ」
質問2: 「母がタクシーに乗ります」
質問3: 「先生がボールを投げる」
質問4: 「(子供の名前)が宿題を終えます」
4つとも答えられた子は、英語の構造をよく理解していると言えますが、’I like apple’とは答えられたものの、2~4つ目の質問で躓いたら、英語教育がきちんと行われていないかもしれません。
上記4つの質問の文法構造は共通して同じです。 したがって、1つ目の質問を正確に言えた子なら、2~4つ目の質問も簡単に組み立てられるはずです。
ここでは難しい文法用語である「主語」、「目的語」、「動詞」などを説明する必要はなく、自然に英語の構造が身についていることが重要なのです。
また、この実験自体を英語だけで説明していたら、進行すらおぼつかなかったかもしれません。 つまり、子供の理解力と英語能力を考慮しない英語だけのESL方式には限界があります。
ESL方式は正確な文法的構造を説明できず、子供が授業状況を100%理解することもできません。 では、何が問題なのか本論で具体的に比較分析してみましょう。
ESLvs.EFL
用語の定義
前回のコラムでもご紹介しましたが、改めて用語の定義を説明したいと思います。
ESL(English as a Second Language)は第2言語としての英語を意味し、EFL(English as a Foreign Language)は外国語としての英語を意味します。 ESLは英語が公用語または主要言語の国で英語を教えるアプローチであり、EFLは英語が外国語の国で必要なアプローチです。 簡単に説明すると、日本は英語が公用語ではないので、実際に教室外でコミュニケーションをとる時、英語を日常会話として使いません。 したがって日本はEFL環境です。 ESLよりはEFLで学ぶ方が効率的なのです。
*補足説明
アジア地域ESL諸国: インド、香港、フィリピン、シンガポール、グアム、パプアニューギニア、フィジーなど
アジア地域のEFL諸国: 日本、韓国、中国など
「100%英語」ESL方式の改善の必要性
ESLアプローチを採用している教室やスクールでは、単に状況別の単語暗記と例文を子供たちに暗記させる方式で行われます。 また、英語だけの授業がほとんどなので、言語の構造的な違いを説明し、日本人の観点から英語の文章を作る適切なトレーニングができません。 反面、EFL方式は適切なトレーニングが可能です。
また、Phillipson(1992:2)が主張したように、ネイティブ教師によって行われる「言語帝国主義」は、EFLの国の子供たちにとって多重言語の発達を阻害する恐れもあります。
つまり、日本の状況を考慮せずEnglish-onlyの授業は、”英語は「立派な言語」で日本語よりも優れている”という概念をより強めることがあります。 また、そのために日本人には非効率的で言語差別が存在する可能性があります。
正しい学習方法とは
English-onlyの授業だけが理想的なアプローチというESL方式は、EFLの環境で学ぶ日本の子どもたちのためには見直される必要があります。
そのため、日本語と英語を自由に駆使できるバイリンガルとネイティブ講師の役割を適切に混合してトレーニングすることが、最も理想的かもしれません。
もちろん、日本語を混ぜて授業を進める場合、子どもたちが自分たちに馴染みのある日本語を話してしまうのではないか、という懸念があるかもしれません。 しかし、このような懸念も、前述した「ネイティブ講師でなければ効果的に学べない」という言語差別主義的な認識から始まったものかもしれません。 英語教育業界において、職業安定性の利害関係があるからです。
また、このような問題は、よく構成されたカリキュラムと教師の授業進行能力で十分に克服できます。 すべてのことには長所と短所があります。
しかし、何が効率的かを考慮し判断した方が、学習効率においては良い結果を生み出すと考えます。