2026/10/05 英語教育の潮流・トレンド

子どもの英語教育を考える家庭の間で、マレーシアは親子留学や教育移住の候補の一つになっています。
日本から比較的近く、英語で学べるインターナショナルスクールがあり、家族で生活しながら教育環境を選べる点に関心を持つ家庭もあるでしょう。
しかし、海外で英語を学ぶ方法は、マレーシアのインターナショナルスクールだけではありません。
ヨーロッパの語学学校で短期集中型の英語コースを受講する。ニュージーランドの現地校に通う。フィリピンで会話練習を増やす。シンガポールやドバイへ家族で移り、英語で教科学習をする。
国が違えば、学び方も得られる経験も大きく異なります。
大切なのは、「どの国が一番人気か」ではなく、子どもに何を経験させたいのかを先に考えることです。
「英語を学ぶ留学」と「英語で学ぶ留学」は違う
子どもの海外留学は、大きく二つに分けられます。
一つは、英語そのものを学ぶ留学です。語学学校やサマーキャンプに参加し、会話、文法、語彙、発音などを集中的に練習します。
もう一つは、英語を使って教科を学ぶ留学です。現地校やインターナショナルスクールに入り、算数、理科、社会などを英語で学びます。
前者は比較的短期間でも参加しやすく、後者は一定の英語力や学力、生活への適応力が求められます。
「海外に行けば自然に英語が伸びる」と考えるのではなく、英語を授業として学ぶのか、生活や教科学習の中で使うのかを確認することが、留学先選びの第一歩です。
1.マルタ――欧州で経験するジュニア語学留学
マルタは、地中海に位置する小さな島国です。英語を学ぶための認可語学学校が多く、ヨーロッパの文化に触れながら英語を学べる短期留学先として比較できます。
マルタ国家統計局によると、2025年には34の認可英語学校で、7万6,063人の外国人が英語コースを受講しました。
注目したいのは、受講者の年齢です。
15歳以下が29.2%、16〜17歳が20.9%を占め、合わせると約半数が17歳以下でした。7月と8月の受講者が多いことからも、夏休みのジュニアプログラムと親和性の高い留学先であることが分かります。
多くは語学学校で英語を学ぶプログラムであり、現地校へ長期間通う教育移住とは異なります。英語学習に加えて、異なる国の生徒との交流や、欧州の文化に触れる経験を重視する家庭に向いています。
2.ニュージーランド――英語で学校生活を経験する
英語を使って教科を学ぶ経験を重視するなら、ニュージーランドが候補になります。
ニュージーランド教育省によると、受け入れ校の判断により、留学生は数日から数年間まで現地校へ在籍できます。短期の学校体験、1学期の留学、1年間の留学など、期間を選びやすい点が特徴です。
授業料を支払う留学生を受け入れる学校は、留学生の安全や生活を守るための行動規範に参加している必要があります。子どもが保護者と離れて生活する場合は、学校側にも一定のケアが求められます。
また、17歳以下、またはYear 1〜13で学ぶ子どもの保護者は、条件を満たせばGuardian Visitor Visaを申請し、子どもと同じ期間滞在できます。10歳未満の留学生は、原則として法的保護者と暮らすか、認可された学校寮に入る必要があります。
短期体験から長期留学まで選べる一方、語学学校とは異なり、英語で授業内容を理解し、課題に取り組む力が必要です。英会話だけでなく、学校生活全体を経験させたい家庭に適しています。
3.フィリピン――発話量を増やす短期集中型
フィリピンは、現地校への進学よりも、語学学校で英語を集中的に学ぶ留学先として比較すると分かりやすいでしょう。
親子で同じ施設に滞在しながら学ぶプログラムや、会話練習を多く取り入れた短期コースなど、学校によってさまざまな形式があります。
ただし、授業数が多いことと、実際に英語を使えるようになることは同じではありません。
講師とのレッスン以外に英語を使う機会があるか、子どもの年齢に合ったカリキュラムか、自由時間や異文化交流が確保されているかなどを確認する必要があります。
また、フィリピン入国管理局によると、18歳未満、または非学位コースを受講する外国人には、条件によりSpecial Study Permitが必要です。外国人を受け入れられる認定校かどうかも確認しなければなりません。
短期間で発話量を増やしたい家庭には検討しやすい一方、学校の認可、講師の指導力、滞在施設、安全管理を個別に調べることが大切です。
4.シンガポール――英語を使って高い学習内容に取り組む
シンガポールの公立系学校では、英語が授業の主な使用言語です。
外国人生徒向けの入学試験も英語で行われます。シンガポール教育省は、入学希望学年の一つ前の英語と算数の内容を理解しておく必要があると案内しています。
つまり、英語をこれから学び始めるための環境というより、英語を使って学習に参加する準備ができている子ども向けの選択肢です。
すべての学年へ自由に入学できるわけでもありません。Primary 6やSecondary 4・5など、新規入学が原則として認められにくい学年があります。Student’s Passや、現地で学校からの連絡を受けられる保護者・ケアギバーの登録も必要です。
シンガポールへの進学や教育移住を考える場合は、英語力だけでなく、算数を含む学力、入学時期、進級制度、母語科目の扱いまで確認する必要があります。
短期の英語体験というより、中長期的な進学計画の一部として考える留学先です。
5.ドバイ――カリキュラムから選ぶ教育移住
ドバイも、近年の国際教育を考えるうえで注目したい地域です。
ドバイの教育当局KHDAによると、2024〜25年度には227の私立学校に38万7,441人が在籍していました。生徒は185の国籍にわたり、17種類のカリキュラムが提供されています。在籍者数は前年度から6%増加しました。
カリキュラム別では、英国式が37%、インド式が26%、米国式が14%、国際バカロレアが7%です。
ドバイの特徴は、単に英語環境を選ぶのではなく、将来の進学先を考えてカリキュラムを選べることです。
一方で、子どもだけが参加する短期留学というより、保護者の就労や事業、居住資格を伴う家族での教育移住が中心になります。学校ごとの学費差も大きく、住居費、医療保険、送迎費なども含めた検討が必要です。
「新しい英語留学先」というより、「多国籍環境で教育を受けるための移住先」として捉えるほうが実態に近いでしょう。
年齢と目的から留学方法を考える
留学先を選ぶときは、まず子どもの年齢と目的を整理します。
幼児や小学校低学年では、英語力を急激に伸ばすことより、海外でも安心して過ごし、異なる言葉や文化に興味を持てるかが重要です。保護者が同行する親子留学や、短期間の体験型プログラムが現実的でしょう。
小学校高学年から中学生では、ジュニアキャンプ、語学学校、現地校体験など、選択肢が広がります。英語力だけでなく、生活面でどの程度自立できるかも判断材料になります。
高校生では、1学期や1年間の現地校留学、交換留学、海外進学を見据えたプログラムなどが候補になります。帰国後の単位認定、大学入試、卒業時期への影響も事前に確認する必要があります。
費用より先に確認したいこと
留学を比較するとき、学費や渡航費に目が向きがちです。しかし、安さだけで決めるのは避けたいところです。
確認したいのは、次のような点です。
- 学校やプログラムが公的機関から認可されているか
- 子どもの年齢と英語力に合う授業内容か
- 日本語で相談できる窓口があるか
- 病気や事故の際、誰が対応するのか
- 滞在先や送迎の安全管理はどうなっているか
- 英語を使う時間が実際にどの程度あるか
- 帰国後の学校生活や受験に影響しないか
- 学費以外に、住居、食事、保険、送迎などがいくらかかるか
「授業時間が長い」「英語で授業を行う」といった説明だけでは、プログラムの質までは判断できません。授業外の生活やサポート体制まで含めて比較することが大切です。
人気の国ではなく、目的に合う学び方を選ぶ
マルタ、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、ドバイは、それぞれ異なる学び方を提供しています。
短期間で英語学習と異文化交流を経験するならマルタ。現地校生活を体験するならニュージーランド。集中的に発話練習をするならフィリピン。英語で高い学習内容に取り組むならシンガポール。カリキュラムを選び、家族で教育環境を変えるならドバイ。
どの国にもメリットと注意点があり、すべての子どもに合う留学先はありません。
海外へ行くこと自体を目標にするのではなく、帰国後にどのような力や経験を残したいのかを考える。その目的から逆算して、国、学校、期間、留学方法を選ぶことが、子どもに合った海外教育につながるのではないでしょうか。
参考資料
マルタ国家統計局「Teaching English as a Foreign Language: 2025」(2026年4月23日)
ニュージーランド教育省「Enrolling students from overseas」
ニュージーランド移民局「Guardian Visitor Visa」
フィリピン入国管理局「Student Visa/Special Study Permitに関するFAQ」
シンガポール教育省「Studying in Singapore」(2026年1月更新)
ドバイ教育当局KHDA「Dubai’s private school sector records 6% enrolment growth」(2025年1月9日)
※制度、ビザ、学費、入学条件は変更される場合があります。実際に留学を検討する際は、各国政府、学校、在外公館などの最新情報をご確認ください。
Inter-Brains English株式会社について
Inter-Brains English株式会社は、「英語を学ぶことを、その先の世界や選択肢につなげる」をテーマに、子どもから大人までの英語教育サービスを企画・運営しています。
OUCHI INTER(おうちインター)
幼児から高校生までを対象とした、子ども専門の英語教育サービスです。オンラインレッスンと講師がご自宅へ伺う対面レッスンを通して、一人ひとりの年齢や英語力、学習目的に合わせた学びを提供しています。
英会話だけでなく、フォニックス、リーディング、ライティング、文法、英検対策まで、将来につながる総合的な英語力を育てます。
▶ OUCHI INTER公式サイト
https://ouchi-inter.jp/
LATVER ENGLISH(ラトバーイングリッシュ)
「英語の語順で考え、自分の言葉で話す力」を育てるAI英語学習サービスです。
日本語と英語の語順の違いを視覚的に理解する学習方法と、AIによる会話・発音・表現練習を組み合わせ、英語を知識として覚えるだけでなく、実際に使えるようになることを目指しています。
▶ LATVER ENGLISH公式サイト
https://latverenglish.com/
本コラムでは「AI時代の英語教育」をテーマに、子どもから大人までの英語学習、バイリンガル教育、留学、教育の選択肢、AIとの向き合い方などについて、特定の教材やサービスに偏らない情報発信を行っています。
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