2026/10/06 中学受験英語

「海外大学への進学に強い学校には興味がある。でも、うちは帰国子女でもインターナショナルスクール出身でもないから、あまり関係ないのでは?」
少し前まで、「国際コース」「インターナショナルコース」というと、海外駐在から帰国した子どもや、幼少期から英語環境で育った子どものための特別な進路という印象がありました。
ところが現在、東京の私立中学を中心に、この状況が変わりつつあります。
広尾学園、芝国際、サレジアン国際学園などでは、海外在住経験のない国内育ちの子どもでも、高い英語力を身につけることで国際系コースを目指せる入試ルートが設けられています。
特に一つの目安になっているのが英検2級~準1級レベルです。
もちろん、「英検2級を持っていれば合格」という単純なものではありません。英語で文章を読み、自分の考えを書き、面接で説明し、学校によっては算数や理科を英語で学ぶ力まで求められます。
それでも、小学生のうちから英語を継続している家庭にとって、「英語を習い事で終わらせず、中学受験そのものに生かす」という新しい選択肢が生まれていることは確かです。
まず知っておきたい「AG」と「SG」の違い
国際系中学を調べると、よく登場するのがAG(Advanced Group)とSG(Standard Group)という名称です。
学校によって細かな制度は異なりますが、おおまかには次のように考えると分かりやすいでしょう。
| グループ | 入学時の英語力 | 主な生徒像 | 授業 |
|---|---|---|---|
| AG | 高い英語力が前提 | 帰国生、インター経験者、国内で高度な英語教育を受けた生徒 | 数学・理科・社会なども英語で学ぶことが多い |
| SG | 初級~中級から入れる場合も | 国内の一般小学校出身者を含む | 英語を集中的に伸ばしながら、教科学習は日本語中心の場合が多い |
重要なのは、現在のAGが「帰国子女だけのクラス」ではなくなってきていることです。
国内の小学校に通いながら、英語スクール、オンライン英会話、英検学習、多読などを組み合わせて高い英語力を身につけ、AGに挑戦する子どもも受験制度上は想定されています。
広尾学園|国内生でも「国際生AG回」からAdvanced Groupを目指せる
国際系中高一貫校の代表格として知られるのが広尾学園です。
中学校のインターナショナルコースには、
- Advanced Group(AG)
- Standard Group(SG)
があります。
広尾学園AGはどんなコース?
AGでは、英文学だけでなく、数学・理科・社会など主要教科の多くを外国人教員から英語で学びます。
そのため、必要なのは「英検問題が解ける英語力」だけではありません。
例えば数学であれば、文章題を英語で読み、問題の条件を理解し、先生の説明を英語で聞きながら授業についていく必要があります。
つまりAGは、英語を「勉強する科目」としてではなく、英語を使って他の教科を学ぶ段階に入っている生徒向けのコースです。
SGは国内生にも入りやすい
一方、SGは入学後に英語力を大きく伸ばしていくことを想定しています。
AGほど高い英語力を入学時点で求められるわけではなく、一般の4科型中学受験を通じてSGに入るルートもあります。
中学校ではAGとSGに分かれていますが、高校進学時には、本人の希望や成績などに応じて本科・医進/サイエンス・インターナショナルの各コースを選択する仕組みになっています。
帰国生でなくてもAGに出願できる
ここが、これから英語教育に力を入れたい家庭にとって特に重要なポイントです。
広尾学園には12月に行われる帰国生入試とは別に、2月の一般入試期間に「国際生AG回」があります。
2027年度入試では、2月3日に実施され、募集人員は15名。
出願資格では、海外在住経験そのものを必須とはせず、英検2級以上、または同等の英語力を持つ生徒が対象となります。
試験は、
- English:50分・100点
- Japanese:30分・50点
- Mathematics:50分・50点
- Interview:英語・日本語で約10分
という構成です。
数学は英語で出題されるため、英検2級を取得しただけでは十分とは言えません。
英語で教科学習ができるAcademic Englishが必要という点が、一般的な英語入試との大きな違いです。
なお、一定以上のTOEFL iBTスコアを取得している場合にはEnglish試験を免除する制度も設けられています。
国内生と帰国生はどのくらいいる?
広尾学園は、現在のAG・SGについて「帰国生○%、国内生○%」という最新の詳細な割合を公表していません。
ただし入試制度を見ると、AGには12月の帰国生入試から入る生徒と、2月の国際生AG回から入る国内生の双方が存在することが分かります。
したがって、AG=帰国生限定というわけではありません。
一方SGは4科型一般入試からの入学者も多く、国内の一般小学校で育った生徒が国際教育へ移行する入口としての役割を持っています。
海外大学へはどうつながる?
広尾学園の高校インターナショナルコースでは、SAT・PSATなど海外大学受験を意識した学習に加え、AP(Advanced Placement)科目も開講されています。
APは、アメリカのCollege Boardが提供する大学レベルの教育プログラムです。
高校生の段階で大学水準の科目を履修し、試験結果を海外大学出願時のAcademic Achievementの一つとして利用できます。
つまり広尾学園では、
高い英語力 → 英語で教科を学ぶ → SAT・APなど海外大出願に必要な学力を形成 → 海外大学へ出願
というルートを中高6年間で作りやすいことが大きな特徴です。
芝国際|英検の級より「実際に英語で学べる力」を見る学校
2023年に共学校としてスタートした芝国際中学校・高等学校も、国際教育に力を入れている学校です。
中学校には本科と国際ADVANCEDが設置されています。
国際ADVANCEDでは主要教科を英語で学ぶ
国際ADVANCEDでは、
- 英語
- 数学
- 理科
- 社会
を英語で学びます。
担任も日本人教員と外国人教員によるダブル担任制で、クラス運営自体も英語を中心に行われます。
したがって、位置づけとしては広尾学園のAGに近く、すでに一定以上の英語力がある生徒向けです。
芝国際は「英検2級必須」ではない
芝国際の特徴は、広尾学園のように「英検2級以上」を一般国際入試の必須条件として前面に置いていない点です。
2027年度の一般入試「国際」は2月3日に実施され、募集人員は15名。
試験は、
- 国語:30分・50点
- 算数:30分・50点
- 英語:60分・100点
- 英語・日本語面接:約10分
となっています。
算数は英語で出題されます。
そのため、英検資格を持っているかどうか以上に、実際の英語読解力、表現力、算数を英語で処理する力を見る入試と言えるでしょう。
英検で考えるなら2級前後は一つの参考になりますが、学校側が「英検2級があれば合格圏」と示しているわけではありません。
資格よりも、英語を使って学ぶ実力そのものが重要な学校と考える方が適切です。
帰国生と国内生の両方が入れる
芝国際にも帰国生入試があり、2027年度は11月20日と12月19日に実施されます。
一方、国内生は2月3日の一般入試「国際」から国際ADVANCEDを目指せます。
そのため、国際ADVANCEDも帰国生だけで構成されるクラスではありません。
学校側も「十分な英語力があり、さまざまなバックボーンを持つ生徒」を対象としています。
こちらも国内生と帰国生の正確な割合は公表されていませんが、入試制度上、帰国生と国内で英語力を高めた生徒が合流する設計になっています。
Cambridge・IGCSE・A Levelへ
芝国際で今後特に注目したいのが、Cambridge International Educationです。
芝国際はCambridge Internationalの認定校となっており、中学段階ではIGCSE、高校段階ではA Levelにつながる国際カリキュラムを導入しています。
A Levelはイギリスをはじめ、世界各国の大学で大学入学資格として広く利用されています。
芝国際では中学から高校1年にかけて、数学、理科、社会、英語などをCambridgeの考え方を取り入れながら学び、高校2年以降は進路に応じた科目を深く学習します。
つまり、
英語力 → Cambridge Curriculum → IGCSE / A Level → 海外大学
という、英国系の国際教育ルートを構築できる点が特徴です。
サレジアン国際学園|英検2級・準1級の位置づけが分かりやすい
もう一校、英語教育を考える家庭から注目されているのが、東京都北区のサレジアン国際学園中学校高等学校です。
インターナショナルクラスは、
- Advanced Group(AG)
- Standard Group(SG)
に分かれています。
AGは週の半分以上を「英語で学ぶ」
AGでは、英語に加え、数学・理科・社会などの主要教科を英語で学びます。
学校資料では、週39時間の授業のうち20時間以上を「英語で学ぶ」環境として構成するなど、高い英語運用力をさらにAcademicなレベルへ伸ばす設計になっています。
一方SGは、国内生や英語学習歴が比較的短い生徒も対象となります。
英語を重点的に学びながら徐々に「英語で学ぶ」環境へ移行していくため、中学入学時にAGほど高い英語力がなくても国際コースを選択できることが特徴です。
英検2級=B1、準1級=B2が重要な目安
サレジアン国際学園では、CEFRを使って英語力の基準を示しています。
おおよその対応として、
- CEFR B1=英検2級程度
- CEFR B2=英検準1級程度
が目安です。
2027年度中学入試では、インターナショナルAGを受験する際、CEFR B1相当の資格を提出すると英語筆記に10点加点されます。
さらに、CEFR B2以上を提出した場合には、英語筆記試験そのものが免除され、100点換算となります。
つまりサレジアンについては、英検資格の意味が非常に分かりやすく、
英検2級レベル=AGに挑戦する際の一つの基準
英検準1級レベル=入試でも大きなアドバンテージ
と考えることができます。
2027年度一般入試ではAG30名
2027年2月1日の第1回入試では、募集人員50名のうち、
- 本科:10名
- International SG:10名
- International AG:30名
という構成になっています。
本科・SGは国語・算数の2科、または4科受験。
一方AGは、
- 英語筆記
- 英語エッセイ
- 英語・日本語面接
で選考されます。
つまり、「4科受験で競うルート」と「高度な英語力で競うルート」が明確に分かれています。
帰国生だけではなく国内生もAGへ
サレジアン国際学園にも帰国生入試がありますが、2月の一般入試でもAGを募集しています。
また、海外経験はあるものの帰国生入試の条件を満たさない生徒や、国内インターナショナルスクール在籍者向けの「国際生入試」もあります。
そのためAGには、帰国生、インター出身者、高度な国内英語学習者など、異なるバックグラウンドを持つ生徒が集まる仕組みです。
学校側も帰国生と国内生の正確な在籍割合は公表していませんので、「AGの○割が帰国生」といった数字を一概に示すことはできません。
高校ではWACEによるDual Diplomaへ
サレジアン国際学園の海外大学進学ルートで特徴的なのがWACE(Western Australian Certificate of Education)です。
高校International Course AGでは、高校1年の3学期から西オーストラリア州のWACEカリキュラムを履修します。
所定の条件を満たすと、卒業時には、
- 日本の高校卒業資格
- オーストラリアの高校卒業資格
のDual Diplomaを取得できます。
WACEを利用してオーストラリアだけでなく、英国、カナダなど海外大学への出願につなげることが可能です。
広尾学園のAP、芝国際のA Levelとはまた異なる、オーストラリア型の海外大学進学ルートです。
3校を比較すると何が違う?
| 学校 | 国際系コース | 国内生 | 英語力の目安 | 主な海外大ルート |
|---|---|---|---|---|
| 広尾学園 | AG / SG | AGも受験可能 | AG出願の一つの基準が英検2級以上 | AP・SATなど |
| 芝国際 | 国際ADVANCED | 一般国際入試あり | 英検必須級の設定より実力重視 | Cambridge・IGCSE・A Level |
| サレジアン国際 | AG / SG | 一般AG入試あり | B1=2級程度、B2=準1級程度が大きな目安 | WACE・Dual Diploma |
では、小学生は英検何級を目標にすればいい?
これから国際系中学を検討する家庭にとって、一番気になるのがここではないでしょうか。
一つの考え方としては、
小学校高学年までに英検2級を取得できる英語力をつける
ことが、大きな分岐点になりそうです。
英検2級レベルまで到達すると、広尾学園AGやサレジアンAGなど、これまで「帰国子女向け」と考えられていたコースが現実的な進路候補として見えてきます。
さらに準1級まで到達すれば、サレジアンのように入試で明確な優遇を受けられる学校もあります。
ただし、ここで気をつけたいのは、小学生で準1級を取ること自体をゴールにしないことです。
国際系中学で本当に必要なのは、
- 長い英文を読む
- 英語で自分の考えを書く
- 質問に対して英語で論理的に答える
- 英語で算数・数学の問題を理解する
- 理科や社会について英語で考える
といった力です。
英検は、その英語力を測る一つのマイルストーンとして活用するのがよいでしょう。
低学年から「英検対策だけ」にしないことが重要
これから英語学習を本格化する小学生であれば、まずは、
- フォニックス
- 音読
- 基本語彙
- 基本文法
- 多読
- 英会話
などを通して英語の土台を作ることが重要です。
そのうえで、
5級・4級 → 3級 → 準2級 → 2級
と段階的に資格試験を利用します。
準2級~2級あたりからは、英検問題集だけではなく、英語の本、ニュース、科学、社会問題などにも触れ、WritingやDiscussionを増やしていく。
さらに国際系中学を具体的に目指す場合には、英語で算数や理科を学ぶCLIL・イマージョン型学習も取り入れていくことが有効です。
「英語か、中学受験か」ではなく「英語を中学受験に生かす」
従来の中学受験では、小学4年頃から進学塾に通い、国語・算数・理科・社会を学ぶ4科型受験が主流でした。
もちろん現在でも、それが中学受験の中心であることに変わりはありません。
しかし、幼児期や小学校低学年から長く英語を学んできた子どもにとっては、受験のために英語学習を一度止めることが必ずしも唯一の選択肢ではありません。
これまで積み上げた英語力そのものを、中学校進学の武器にする。
そして中学入学後も英語で教科を学び、高校ではAP、A Level、WACEなど世界につながるカリキュラムへ進む。
その先に、国内大学だけではなく海外大学という選択肢を残しておく。
こうした教育ルートが、以前よりも現実的になっています。
学校選びでは「海外大合格者数」だけを見ない
最後に、国際系中学を比較するときにぜひ確認してほしいのが、単なる「海外大学合格者数」ではなく、どのような仕組みで海外大学へ進学するのかという点です。
今回紹介した3校だけでも、
- 広尾学園:AP・SATなどを活用する米国型に近いルート
- 芝国際:Cambridge・A Levelを活用する英国型ルート
- サレジアン国際:WACE・Dual Diplomaを活用するオーストラリア型ルート
と大きく異なります。
「英語に強い学校」という一括りではなく、中学入学から高校卒業までの6年間で、どのような学力・資格を身につけ、どの国の大学へ出願できる状態を作る学校なのかまで見ることが大切です。
英語力が「学校選び」そのものを広げる時代へ
まだ小学校低学年であれば、今から「広尾学園に行く」「海外大学へ行く」と決める必要はありません。
ただ、英語をしっかり学んでおくことで、将来選べる学校が増えることは知っておいてよいでしょう。
英検2級が見えてくると、国際系中学という選択肢が現実味を帯びる。
準1級レベルまで伸びれば、さらに高度なAGや海外大学進学を前提とした教育環境も視野に入ってくる。
そして最も大切なのは、英検の級そのものではなく、英語を使って学び、考え、発信できる力を育てることです。
「何歳までに英検○級を取らせるか」だけではなく、
「この英語力を、中学・高校・大学でどのような学びにつなげていくのか」
まで少し先を見ながら学習を続けていく。
それが、これからの小学生の英語教育を考えるうえで、一つの重要な視点になっていきそうです。
※本記事は2026年10月時点で公表されている2027年度入試情報、各校公式サイト・学校資料等をもとに作成しています。募集人員、出願資格、英語資格の扱い、カリキュラム等は年度によって変更される場合があります。実際に受験される際は必ず各学校の最新募集要項をご確認ください。また、各校とも国内生・帰国生の最新の在籍割合を詳細には公表していないため、本記事では公表されている入試制度・教育内容をもとに構成の特徴を説明しています。
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